俺は、この世界に一人きりだ

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「さっきの奴といい、河童といい……今日は何か変だ……」 トイレで一度脳を落ち着かせてから、改めて先程の出来事を回想する夜一。 まず発見したのは女子生徒。 そして河童。 さっきの男子生徒。 河童はともかく、残り二人の生徒はどこかで見たことがある気がするのだ。 「何だったかな……どこのクラスだっけ……?」 と、夜一が首を傾げた時、目の前の鏡に何かが映った。 女子生徒の姿だ。 ここ男子トイレ!と夜一が叫びそうになる前に、鏡に映る女子生徒はボソボソと呟きだす。 「不幸が不幸を呼び……そして歯車は回る……少年は闇の犠牲者……」 酷く恐ろしい単語を並べ、俯き気味のその少女はニヤリと笑った。 「な、なななななな………」 言葉にならない恐怖で、恐る恐る後ろを振り返る。 が、誰もいない。 確かに鏡に映っていたはずなのに。 幽霊?幻覚? 俺、末期なのか? 頭の中で自問自答を繰り返し、夜一は仕方なくまた前を向いた。 すると、また鏡に女子生徒が映っているではないか。 「ひぃぃぃぃ!!!」 反射的に悲鳴をあげ、夜一は飛び上がる。 鏡に映る女子生徒は夜一を指差し、また呟いた。 「絶対に……逃げられない……宿命の糸が絡む……」 夜一は今度こそ!と素早く振り返ったが、やはり誰もいない。 瞼を擦り頬をつねり、頭を数回壁に打ち付けたが結果は変わらなかった。 「………俺、もうダメかも……」 自分に絶望し、夜一はトボトボとトイレを出ていく。 その姿を見つめている者がいるとは知らずに……  
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