アプラクサス

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 このような彼女の道程を聞いた時、「鳥は卵の中から抜け出ようと戦う。卵は彼の世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。鳥は神向かって飛ぶ。神の名はアプラクサスという。」という、ヘルマン=ヘッセの『デミアン』の一節を思い出した。  これは、ある神話で様々な解釈があるため一概には言えないが、人の成長を陰喩しており、それには今ある世界(多くは親に守られた明るい安心した世界)を一度壊さなければならないということをアプラクサスという鳥に例えている。  聞くところによれば、彼女は中学生までは勉強も素行の面も、かなりの優等生であったようだ。しかも親が特に教育熱心だったわけでもなく、良好な家庭環境が子供をそのように育んだのだろう。 しかし、高校生の頃から、親や教師が苦々しく思う行動をするようになった。だが、これは素行不良とまでは言えないもので、バイトをしたり、ギャル系のファッションにハマったりといった程度であり、学業にも悪影響を与えてはいなかったみたいだ。
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