アプラクサス

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 だが、彼女に言わせれば、素行に問題があるから学業に影響があるとか、成績が優秀だから模範生であるという親や教師が得てして持っている偏見を覆したかったらしい。  これを陽性に、つまり破天荒に、難なくやり遂げる人は、いわゆる型にはまらない、型破りな人と呼ばれ、いとも簡単に世界を破壊するのであろう。  しかし、彼女の場合は陰性に、つまり苦しみながら長い時間をかけて、世界を破壊して行ったのだと思う。その破壊こそ、スロプロや風俗嬢になったことで、苦しみこそが普通で平凡でありたいという、裏返せば自分の行くべき場所がわからないことであったと、私は思う。  全くの余談だが、多くの人は世界を壊そうとしても、それに躊躇してしまい、卵から抜け出すことはない。かなり激しい破壊を試みた人であっても、そうである。そういう人こそ、彼女をして普通の幸せそうな人なのではないだろうか。 確かに幸せではあるかも知れない。卵を抜け出るには、危険が伴うのだから・・・
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