妄想と偽装

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 あの転機の日から、私は妄想を繰り返すことで、精神の安定を保っているという状態でした。 「自分はちょっと前まで、小さな会社の普通の会社員だったけど、会社が倒産して、今は失業中」 こんなふうに、自分に思い込ませることで、「私は違う」という自尊心を保っていました。 一方、ネットカフェで、例の掲示板を見に行き、自虐的な気分になることもしばしばありました。  風俗嬢もフリーターも同じものとすることすら、かなり無理のある自己正当化です。 そのうえ、「フリーターは人生終わってる。」「フリータ―社会のクズ」「フリーターの将来はホームレス」こんな書き込みを読み、自ら不安や卑等感を駆り立て、その解消のためさらに妄想を激しくするのです。  多分、その頃の私は一人で遠い目をしてニヤニヤにして、ブツブツと独り言を発したり、他人から見ればかなりヤバい状態だったと思います。
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