疎外感

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 松山という街に住んでみると、彼女の「幸せそうに見えた。」というのが、なんとなくわかる。  多分、一生を地元に縛られて生きることに、何ら疑問を感じたことの無い人たちの安心感と共感がそう見えるのだろう。 他所者は、決してこれを感じることができない。 逆に、退け者にされたような疎外感を受けてしまい、「地方は閉鎖的だ。」なんて言う。 松山の電鉄系某デパートに就職した彼女が、「なんか職場に馴染めなかった」との理由で、10ヶ月程で退職したことの根は、こんなとこにあったのかも知れない。  退職した後、彼女は雇用保険も受給せず、スロットで生活をし始めたらしい。いわゆる、スロプロだ。 確かに、彼女の友人には、数名こういう輩がいたようである。 善良な市民からすれば、羨ましく見えるかも知れない。 しかし、実家暮らしで、家に帰ればご飯があり、お金困ったら親に借り、車すら買ってもらう、こういう基盤があってこそできるものだ。 彼女のように、自分で家賃を払い、生活費の負担もあり、食事もほとんど外食かコンビニでは、続くはずがない。 多分、ここでも彼女は、(なぜ、私はみんなと同じように適当に生きられないのだろう)と疎外感をもったに違いない。 それでも、スロプロ生活は、2年程続いたらしい。 種銭に困った時にと、就職してる間に作った消費者金融の借入限度額50万に達するまで。 しかし、彼女の金銭感覚が狂っていたのだろうが、(50万ぐらいは、バイトとスロットを掛け持ちすれば、すぐに返せる)と楽観的に考えてたようだ。 ただし、友人にも借金のことは一切隠し、「ちょっと、『お水の花道』(テレビドラマ)を見てやってみたい。」と理由を付けて、スナックのホステスを始めたらしい。  彼女が言うに、友人たちも、一度ぐらいやってみたことがある人ばかりだったため、お水ぐらいたいしたこととは、思っていなかったそうだ。 『こうして、困ってもお金は稼げるし、まあスロプロは無理だとしても、お水と掛け持ちなら、かなりの収入になるはず。そして、みんなみたいに生活できる。』
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