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単にお客さんと一緒にお酒を飲むだけで、かなりの時給がもらえる仕事、と軽い気持でホステスを始めましたが、現実はそんなに甘くありません。
デパートの店員と比較にならないくらい、神経を使う仕事でした。
私がホステスをしたのは、二番町の小綺麗なビルの6階にある、クラブのような感じのスナックです。
夜の仕事専門の求人誌「ナイトザウルス」で見つけました。
ご存知のとおり、この手の求人は無数にあるため、目移りしてしまい、なかなか決められないものですが、初めてこういう仕事をするという気負いもあったため、それほど広告の大きくないお店に、自然と目がいきました。
そして、片隅に描かれた、品のある店名の字体がなんとなく気に入り、あるお店に応募し面接することになったのです。
本当かどうかはわかりませんが、この字体は、某有名人が書いたものらく、看板・コースター・マッチ箱なんかに使われていました。後から知ったことではありますが・・・
さて、面接を受ける際にちょっと悩んだのが、履歴書を真実どおりに書くかどうかです。
まあ、この手の仕事は、履歴書なんて求められないものですが、当時の私は全く知りませんでした。大学まで出て、ホステスなんてなんか恥ずかしいし、周りから浮いてしまうのも嫌だなぁ、と思っていました。
かといって、高卒にしてしまうと、高校卒業後が空白になってしまいます。
そこで、いろいろ考えた末、次のような架空の経歴を用意しました。
『地元の高校・専門学校卒業後、地元で就職。けれど、なんかやりたいことと違うなと思って辞めました。その後、都会に出てみたいと思い、北条市に親戚がいることもあって、今は松山でフリーター。』
これで、一応のモラトリアム人間の出来上がりです。
今にして思えば、かなり危うい経歴ですが、当時は、上出来だと思っていました。
南予や東予(いずれも、愛媛県内の田舎)から出て来ているこんな人たちが、結構いるのではと思っていたからです。
しかし、私の思惑は、全くの鳥越し苦労でした。
面接の時に、用意していた履歴書を、求められなかったばかりか、経歴にもほとんど触れられなかったからです。
それどころか、面接をしてくれたママは、とにかくうちで働いて欲しいと言わんばかりに、仕事の説明に終止し、まずは翌日から体験入店することになりました。
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