迷漂1

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自転車で来ていると告げていたにも関わらず、タクシー代として3000円を渡されたことが、すべてを物語っています。 しかし、面接では不要となりましたが、その後、長い間、私は、この偽りの経歴を通しました。 大卒を隠したいというのもありましたが、せっかく偽りの経歴になりきるつもりだったのだから、このままやってみるのが面白いと思ったからです。  さて、ホステスの仕事は、期待に反して大変なものでした。 例えば、お客様のグラスに水滴が付いて来たらおしぼりで拭く、グラスのお酒の量が減ったらお作りする、煙草吸う時はマッチで火を付けてあげる、トイレに行ったら新しいオシボリを出す、吸い殻が2本目になったら灰皿を代えてもらう、暑そうだったら冷たいオシボリを出す、帰る際には上着を着せてあげる、おかきやチョコレートは袋から出してあげる等、これらがまあ、基本動作です。 加えて、笑顔を絶やさず、多少の我が侭や猥褻行為は許容し、とにかく機嫌を損ねないようにする。 また、これが最大の目的ですが、お客様のお酒を私たちが飲みボトルを減らし、少しでも高いボトルを入れさせる、さらにフルーツ等高いメニューを注文させ、売上に繋げる。 さらに、大変なのがお客様の顔と名前を覚えなければならないし、こっちからお誘いの電話したり、アフターに付き合ったり、同伴をしたり、自分が酔いつぶれてしまったり・・・  しかし、これほど大変なホステスという仕事であっても、やって良かったことが2つあります。 一つは、自分で言えるくらい『よく気が付く人』になったこと、もう一つは、人見知りをしなくなったことです。 まあ、目的はどうあれ、あれだけ『おもてなし』に気を使う仕事ですから、当然といえば当然ですが。  さて、こうして何とかホステスにも慣れ、あのまま続けていれば・・・・・まあ、やっぱり同じくホステスをしてるのでしょうが、半年程で辞めました。 思えがけない理由で・・・・
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