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彼女が働いていたというスナックは、通常スナックとは言わないだろう。
システムは、会員制では無くとも、一見の客はまず来ないし、内装は、ゆったりしていてクラブと変わらない。
また、忙しい時は別にしても、隣には必ず女の子が付いてくれる。
ホステスたちの教育も良く出来ており、至れり尽くせりといった感じだ。
かといって、それ程かしこまって入る店でもなく、時には盛り上がり、女の子たちが奇声を上げて騒ぐこともあった。
金額は、私の記憶では、チャージが6千円ぐらい。ボトルはヘネシーが2万・シーバスが6千円、客層は地元企業の社長やそこそこの地位の会社員といったところ。
まあ、松山では、相当上等なお店と言って良いであろう。
思うに、どんな仕事をするにしても、一番最初というのは、ある程度レベルの高い職場で始めるのが良い。
初心の内は、誰でも一生懸命覚えようとするものであり、そんな時の指導者のレベルが高ければ、本人が思いもしない程高度なスキルが身に付くからである。
だとすれば、偶然にしろ、このお店を選んだことは幸運であったと言えよう。
彼女は、今でも『よく気が付く人』で、それはホステスで無くても好感がもてることだし、更には、問題発見力や注意力等、本質的なスキルの原石となるからだ。
ところで、夜の仕事はそこそこ順調であった一方で、彼女の日常生活はおかしくなっていった。
給料は、週3日~4日の出勤で手取り月25万程。
借金の利息が、月1万ぐらいなので、余裕は無くても、普通に生活はして行ける収入だと思うが、彼女は逆に借金を膨らましていった。
原因は、高額なバックや服、アクセサリー等を頻繁に購入するようになったことであるが、借入限度額を増額した消費者金融がこれを増長させたようだ。
それまでの彼女は、ブランド物に興味すらなく、その価値もわからなかった。
しかし、ホステスを始め、他の女の子たちが身に付けるアクセサリーや靴等を、間近でに見るようになると、目が肥えていったらしい。
だが、いくら審美眼に優れ、物の価値がわかるようになろうと、それを手に入れるには、金がいる。
そんな時、彼女が借入れていた消費者金融から借入限度額増額を勧誘するDMが、届いたのである。
彼女は、審査に通るか不安に思いながらも、これ幸いと迷うことなく増額を申し込んだそうだ。
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