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それから部屋の中がシーンと静かになり、やがて晴明がおもむろに声を上げた。
「・・・・・・・・話してくれてありがとうございます。辛かったでしょう・・・・・いきなり知らない土地に来られて・・・・・・・。」
晴明はそう言うと、祖父が孫にする様に刹那の頭を撫でながら抱きしめた。
言った事を信じてもらえた刹那は緊張の糸が切れたのか、晴明の肩に顔を隠し、声を殺して泣いた。
そうして暫くすると、泣きつかれたのか、いつのまにか刹那は眠ってしまった。
晴明は近くにいた黒髪の女性―勾陣と鳶色の髪の男性―六合に言った。
「刹那様を用意した部屋に連れて行ってくれ。暫くは様子を見てくれないか。」
「わかった。」
六合はそう言うと、軽々と刹那を抱き上げて部屋を出た。
「昌浩もそろそろ戻りなさい。明日の出仕に遅れるぞ。」
「分かりました。では、おやすみなさい。」
昌浩はもっくんを引き連れて部屋を出て自室に戻って行った。
暫くして勾陣が言った。
「・・・・・・あの娘、内に秘めている能力(チカラ)に気づいていないな・・・・・。」
「ああ。・・・・・・暫くはこの屋敷に居させよう。その方が彼女にも良いじゃろう。」
「俺は反対だ。」
そう言ったのは蒼色の髪をしている青龍だった。
「あんな素性も知れぬ小娘を何故ここに居させなくてはならん!!何をしでかすか分からんのだぞ!!」
「彼女は大丈夫じゃ。あれと同じ目をしている・・・・悪い子ではない。」
「だが!!」
「宵藍。」
晴明がそう呼ぶと青龍は苦虫を噛み潰したような顔をして、異界へと帰っていった。
「やれやれ・・・・・・先が思いやられるわい・・・・・。」
晴明はため息をこぼした。
「では私も行ってくる。」
そう言って勾陣は晴明の部屋を出ていった。
その後、晴明はおもむろに六壬式盤を取り出すと調べ始めた。
一刻半後に出た結果は晴明の予想を超えていた。
晴明の予想では、刹那の見鬼の才は晴明以上と推測されたが、何か特別なものではないと思っていたからだ。
だが、・・・・・・・・・
「――・・・・・・・・異国の地より舞い戻りし神の姫、この地を災いから救う大いなる光に成らんとす・・・・・・・。」
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