172人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
第五話 「市」
「刹那姉様、入ってもいいですか?」
時刻は丁度巳の刻を過ぎた頃、彰子が部屋を訪ねてきた。
刹那が返事すると、彰子は市に行かないかと誘ってきた。
「市?」
「はい。露樹様にお塩を買いに行ってくれないか言われて、姉様も一緒にどうかなと・・・・思って。」
「市って見ていて楽しい?」
「ええ!!色んなものがたくさん並んでいて、偶に異国のものも混じっていてすっごく楽しいですよ!!」
彰子はそれはそれはにこやかに力説していた。
「へぇ~、彰子がそこまで言うんだからすごいんだな。いいよ、一緒に行こうか。ついでにこの辺の地理も覚えたいし。」
「本当ですか!じゃあ早速行きましょう!」
彰子が慣れた様子で、てきぱきと用意すると、刹那の手をつかんで早く早くと急かした。
彼女にとっては初めて同年代の女の子との買い物にすっかりはしゃいでいた。
そんな様子を晴明と勾陣が目元を和ませながら見ていた。
「初々しいの~。やはり、花があって良いわい。のう、勾陣。」
「ああ。・・・・・護衛は誰がするんだ?」
「今日は彰子様も居るんでな、天一と朱雀に任せた。」
「なるほど・・・・・。」
暫くの間2人が刹那達を見ていると、晴明たちの気づいた刹那はとてとてと清明のところに来て外出許可を貰った。
「では、行って来ます。露樹様。」
「行って来ます、母様。」
「いってらっしゃい。刹那、彰子さん。気をつけてね。」
「「はい。」」
「お金が余ったら、一つぐらいなら好きなの買ってきてもいいですよ。」
「「はーい。」」
「「いってきまーす。」」
彰子と刹那はたわいのない話をしながら市へと出かけた。
すると、後ろから天一ともう一人男がついてきた。
「今日は天一と朱雀が護衛なの?」
「はい。晴明様から仰せつかっています。」
「今日は俺らに任せな!よろしくな、刹那。俺は朱雀だ。」
「あっ、よろしく朱雀。」
自己紹介もそこそこに、四人は市に向かった。
市へと近付くにつれて、周りの人間が刹那をじっと見ている事に気づいた。心なしか顔を赤くしている人も居たが・・・・・・。
「(やっぱ、俺の格好変なのか?似合ってねぇのかも・・・・・)なあ、彰子・・・・・・」
「何ですか、姉様。」
「さっきからじろじろ見られてるんだが、やっぱりこの格好変なのか?」
「(姉様、鈍いのかな・・・・・)いいえ、そんな事はありません。ね、天一、朱雀。」
最初のコメントを投稿しよう!