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暫くして、市での買い物が終わりそろそろ帰ろうかと思った時、刹那は通りすぎた店が気になり、足を止めた。
その店に置いて合った物は楽器だった。
「いらっしゃい、お嬢ちゃん。楽器は好きなのかい?」
「ああ。少しぐらいなら弾けるんだが・・・・これは二胡か?」
「はい。大陸の方から来た楽器なんです。」
「試し弾きをしてもいいか?」
「どうぞどうぞ。」
♪~♪~♪~♪~
♪~♪~♪~♪~
その音色は天女が天空から舞い降りたかのように清らかで、通りを歩いていた人々の足を止めるのには十分過ぎるほどだった。
一通り弾き終わる頃には、人々はうっとりと聞き惚れていて、拍手喝采の嵐だった。
「お嬢ちゃん、上手いね。良かったらそれもって帰りな。実を言うとそれ弾くのが難しい楽器で中々買い手が見つからなかったんだ。」
「いいのか?それじゃあ商売にならんだろう・・・・・。」
「いいっていいって。もって帰りな。」
「ありがとう!!」
その笑顔はまさに天使のごとくその場にいる人々が顔を真っ赤にしていた。
その光景を不思議そうに見る刹那はもう一度御礼を言ってその場を去った。
家に帰ると、昌浩達がちょうど帰ってきた頃で、市であった事を嬉しそうに話す彰子と刹那を見て昌浩ともっくんは可愛いなあと思った。
その夜、安倍邸では、それはそれは美しい音色を奏でる刹那の姿とその音色に聞き惚れる安倍家の姿があった。
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