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第七話 「災難」
・・・・・・・何故、こんな事になったのだろう。
それは、溯ること数刻前、刹那は彰子と共にまた市に来ていた。
今日は彰子と刹那の新しい着物を作るために好きな柄を買ってきなさいと露樹に言われたので、
護衛の六合と勾陣を連れて朝早くから来ていた。
彰子は薄めの橙に小さく牡丹をあしらった物を、刹那は桃色に紅葉の葉が描かれたものをそれぞれ買った。
そのあと、2人は色々市の出し物を見ていった時、急に人の波に飲まれ刹那だけ、逸れてしまった。
やっとのことで人の波から抜け出した刹那は辺りを見回したが、みんなの姿は無く、途方にくれた。
「(ここはどの辺りだろう?随分と市から離れてしまったが、こっちで合っているだろうか・・・・・)。」
暫く、河辺リを歩いていた刹那だが、ふいに、後ろでじゃりっという音に気づき後ろを振り返った。
そこには、みすぼらしい、着崩した着物を着たごろつきが4人いた。
それぞれが刹那をじろじろと見ると、にたっと笑い、ゆっくりと近付いてきた。
その場を駆け出した刹那だったが、そこは男と女。
咄嗟に空手技を使うが、適うはずも無く、すぐに腕を捕まれた。
「っ離せ!!」
「へへっ離せといわれて離す奴が何処にいるんだよ。おとなしくしな!」
「ちょいと、着物を貰うだけだからよ~」
「離せ!!誰が渡すか!とっとと失せろ!!」
そうしているうちに、男たちの手が刹那の服を掴んだとき、四人のうち一人が吹っ飛んでいった。
一瞬、何が起こったのか分からなかった刹那だが、その後次々と男たちが刹那から離れ吹っ飛んでいった。
ゆっくりと振り返ってみると、そこには昌浩に付いて行ったはずのもっくんが本性に戻り、人型になっていた。
状況が掴めずにいた刹那だが、気が抜けたのか、ふらっと地面にへたり込んでしまった。
「大丈夫か?」
「なっ何とか・・・・、ありがとう、もっくん。」
まだ、少し震える体をぎゅっともっくんが抱いた。
「もっく「もっくん言うな・・・この姿の時は紅蓮と呼べ。紅の蓮。お前に俺の名を呼ぶ権利を与える。」」
「紅蓮・・・・・良い名前だな。ありがとう、喜んで呼ばせてもらうよ。」
「おう。」
暫くそのまま抱き合っていたが、中々離れない紅蓮に刹那は言った。
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