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第八話 「夢見」
―――――夢を見た。ここ二週間ほど、刹那が見る夢。それは、日に日に長くなっていた。
月の光が全く無い暗闇の中、それはいた。
顔も姿も暗いせいで殆ど見えないが、気配は感じた。
周りには何も無く、刹那とそれしか存在していないように思えた。
だが、徐々に周りが明るくなっていくとそれの姿が次第にはっきりするようになった。
月が雲で隠れていたからだ。それは屋根の上にいた。背格好からして男だろう。
古代の異国の服を身に纏い、じっと刹那を見る目は快楽を意味していた。
「・・・・みィつけた。我が姫・・・・クククっ・・さぁ、何をして遊びましょうかね・・・。」
刹那が男の姿を確認してから何故か異様に体が震え、頭には警鐘が鳴り響いた。
―――だめ、この男は危険だ。本能が頭に指令を出すが、体は金縛りに合ったかのように動かなかった。
「(くそっ何で動かねぇんだ!!昌浩、おじい様!!っ誰か!!―――――)「・・・・・つな・・・・いせ・・・・せつな、刹那!!!」」
「ぐれ・・・ん、紅蓮っ―――――――!!!!」
ばっと起き上がった刹那の目の前には昌浩ともっくん、晴明がいた。
まだ体は震えていたが、安倍邸の自室にいると分かったので何とか収まった。
「大丈夫か?・・・・・魘されていたぞ。」「うん・・・・もう、だいじょうぶ、だから・・・。」
刹那はもっくんを抱き上げるとそのまま腕の中に納めた。
「・・・・何の夢を見たんじゃ、刹那。話してくれないか?」
刹那はゆっくりと晴明を見るとこくりと頷いた。
「・・・・・・ここ二週間前ぐらいから見始めた夢です。始めは短かったのに最近では長く見るようになって、つい二、三日前になると鮮明になってた。・・・今日見た夢は男の人がいたんです。」
「男の・・・人?」
昌浩が問いたので刹那は頷いた。
「すごく昔の衣装を着ていた、髪の短い男の人。顔は分からなかったけど、声で男の人って分かった。そいつ、俺の方見て笑ったんだ。見つけたって、また言われた・・・・。」
刹那は見た夢を思い出してまた体が震えるのを感じた。が、もっくんの尻尾が顔を撫でたので安心した。
「・・・・・そのあと、体が動かなくなって、みんなの名前言ったのに、誰も、いなくて・・・・」
「そうか・・・・怖かったのう・・・・もう安心しなさい。大丈夫だから。」
晴明がそう言うと、刹那はまた眠った。
「・・・・今日は昌浩の護衛を六合と勾陣に任せる。紅蓮は刹那のそばにいなさい。」
「・・・・分かった。」
晴明はそう言うと部屋を出た。後に残った昌浩も心配そうに刹那を見てからそっと部屋を出ていった。
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