一章

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  その店は、何処かの国の、何処かの街角にぽつんと建っていた。何処にでもあるようなパン屋だった。 特別美味しいわけでもなく、特別安いわけもなく、街角の風景に溶け込んでいる、薄汚い小さなパン屋だ。 この店で生計を立てている者がいた。この街の一住人として、大きな歯車のそのまた歯車の、歯車の歯車の……一つとして社会に貢献している。 ちょっと変わった頭の色をしている、愛想はいい穏やかな男。 人形みたいに整った容貌をしているが、とんでもなく無愛想な小柄な女。 二人は、パン屋を経営し、生計を立てていた。  
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