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百合の家に着くと、普段は使っていなそうな客間に案内された。
百合はお茶を淹れてくると言い、部屋を出てキッチンの方へ歩いて行った。
瑛一は抱き抱えていた辰実をベッドに下ろすと、ベットの脇にあった椅子に腰掛ける。
「誤解解けたのか?」
ヒロが聞くと、瑛一はうなづく。
「……まさかタツに叩かれるとは思わなかった」
叩かれた頬を触りながら瑛一が言うと、
「そんだけタツに不安な思いをさせてたんだろ」
と呆れたようにヒロは返した。
瑛一は反論せずただ黙って辰実の手を握る。
その様子を見ていたヒロは、何か瑛一の様子がおかしいことを気づいていた。
瑛一は、ヒロに伝えたいけど伝えられない思いを抱え、何も言えずにいる。
普段は何かあればすぐに自分に相談してくる瑛一が、何も言わないことにヒロは疑問を持ち聞いた。
「瑛一」
「ん?」
「あの百合さんって人、結局何? 俺に紹介したかったって……」
瑛一はいきなり核心を突かれ、ビクッと肩を震わせた。
何も言わない瑛一に、ヒロは続ける。
「あの百合さんって人、もしかして俺のーー」
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