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茂平が上尾の宿場で、入った一膳めしや「かなや」。
あまりの空腹に耐えかねて、ふらりと入ったのだが、そこにひときわ美しい女がかいがいしく働いていた。
その女を見て、茂平は今までに味わったことのない、いいようのない思いを抱いた。
恋だった…。
女の名は、おさん。
もとは、新橋でひときわ鳴らした芸者だったが、今では土地のやくざの金屋金五郎に縁づいて、一膳めしやを営んでいる。
しかし、そんなことは知る由もない茂平。
おさんに話し掛けることも、ままならず、ただただ飯を平らげていった…。
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