風花～かざはな～

女嫌い

江戸は日本橋の呉服問屋越後屋の手代、茂平。
元は百姓の次男坊だったが、継ぐほどの豪農でもなく、越後屋に奉公して、十三年にもなる。
無骨者で、人間が堅く、女嫌い。
鼻筋が通って、眉の濃い、好男子だが、女嫌いがたたって女房はおろか、好きな女の一人もない。
「ひょっとするってぇと、茂平は不具じゃあねぇか？」
なんて、陰口を叩かれる始末。