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プロローグ。
彼と出会った最初の記憶は、説教の内容で埋め尽くされている。
呼んでもいないのに突然私の夢の中に現れた彼は、一言『お前の夢には夢がねえ!』と叫ぶと、私に正座をするよう強要し、頼んでもいないのに夢のもつ意味とその重要性について滔々(とうとう)と語ったのだ。
俗に言う、余計なお世話というやつである。
「おい、ユメナシ」
そんな彼が再び現れたのは、説教をされた日から三日ほど経った、夢の中。『ユメナシ』というのは彼が付けた私のあだ名である。夢が無いからユメナシ……まんまである。捻りも何も無い。
私がそう言うと、彼は『夢が無い奴に言われても嬉しくねえやなあ』と言った。別に褒めてない。
「おう、そんなことより出掛けるぞ」
どこへ? と問うなり、彼はにやりと笑みを浮かべ、ふわりと宙に浮かんだ。夢の中なので何でもアリである。
「お前に夢を見せてやる」
そう言うと彼は私の襟首を掴み上げ、引きずる様にして飛び立った。
首は絞まるが苦しくはない。重ね重ね言うようであるが、ここは夢の中なので何でもアリなのである。
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