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   間。  そう、間である。その一瞬のわずかな間、彼女は思考を取り戻した。    誰の声だろう? 宙を舞う歌声――自分自身の中に、別の誰かが混ざり混んだ。そう思った途端に、彼女は歌声そのものではいられなくなり、思考も、感覚も、重力もある彼女自身になってしまった。  目、目がある。眼下に広がる街並み。ここは高い。自分の手足、身体が見える。こんな姿では飛べるはずがない。思考、感覚、重力、落ちる。  宙を舞えるのは歌声だけ。重力を認識した彼女は、たちまち地面へと落下した。  全身、毛が逆立ち、鳥肌が立つ。寒い。死ぬ。嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。  
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