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   謎の人物の突拍子もない質問に、男は面食らう。男は自分の正体など考えたこともなかったのだ。  混乱する男はしばし逡巡(しゅんじゅん)した末に、自らの名前を名乗った。 「んなこと聞いてねえよ。バカ。それはお前の正体を隠す為のモンだろう」  謎の人物は言う。『それは親がくれた鎧にすぎない』と。 「俺が聞いてるのは、その鎧を剥がした中にある本質だ」  それを聞いてますます男は混乱してしまう。鎧を剥ぐ――すなわち名前を剥ぎとった後に、自分と呼べるものは果たして残るのか。  名前の無い自分を自分と呼ぶためには、何を示せば良いのだろう。皆目見当もつかない。  深く長く悩んでも答えは見えず、結局男は苦し紛れに、『自分は自分だ!』と怒鳴り散らした。  謎の人物がにやりと笑う。  
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