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「なるほど。お前の正体は『ドッペルゲンガー』だな!」
謎の人物は嬉々としてそう言った。男には意味が分からない。
「お前が何から逃げていたか教えてやるよ。これだ!」
景色が、空気が、目の前にいる謎の人物が、変わる、変わる。
白い空間に色が湧き出し、景色を描く。空気は沈み、目の前の人物が、溶けて、ぐねぐねと、粘土のように、形が。
気づけば、景色は再び泥の沼。重い空気が支配する中、目の前の人物は、変わり、
「ぼおおう、ぼぼおおおう」
男と全く同じ姿になった。ただ違うのは、奇妙な声を発することと、白目が全く無いということ。
「ぼおおう、ぼぼおおおう」
後ずさる男。足は上がらない。じわじわと近づいて来る自分。粘りつく足。絡み、男は転んだ。
ずぶずぶと沈み込む身体。それでも、男は必死で後ずさる。
べちゃり。
男の背中に何かが当たる。壁か? 行き止まり? 違う、柔らかい。手探りで触れて分かる形。これは、人の足?
先程の人物だろうか。ならば、助けを。そう思い、振り向いた男は絶叫した。
そこにいたのは、
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