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少年は目の前の生物の気が変わったのを敏感に感じていた。
ピリピリとした何かが肌に痛いが、心地いい。
少年は我慢できずに声をあげて笑った。
「ヒ…ヒヒヒ…ヒヒヒヒヒ!!」
高い子供の声にこの笑い声。そして血のような色の目に漆黒の鎌。
まるでその少年は悪魔のようだった。
「はっ!!」
女は笑い出した隙を突こうと素速く近づき、剣を振り下ろす。
「ヒヒヒ!!」
少年は鎌を振り上げ、剣ごと女を弾いた。
女は空中で身を翻し、距離をとる。
(何あの力は…振り下ろした剣が弾かれるなんて…さっきの衝撃で右手が痺れて動かせない。)
女はたまらず痺れた右手を見、左手で握った。この隙を少年が見過ごすはずがない。
「ヒ!!」
女ははっとして前を見たがそこには漆黒の凶刃が迫っている。
「く!!」
女はとっさに後ろへ跳んだが、右肩から左の腰に向かって斜めに斬られてしまった。傷は深く、血は止めどなく流れている。
「ハァ……ハァ……私もまだまだね」
女は鮮血をたらし、肩で息をしながら少年を見た。
少年は鎌に付いた血を拭き取り、舐めていた。ご馳走にありつけたような笑顔を浮かべて……
「ふぅ…魔法で終わらせるしかないわね…」
女はそう言うとネックレスを外し
「万物よ、地にひれ伏せ。《グラビティ》……ごめんね」
魔法を使った。
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