367人が本棚に入れています
本棚に追加
グシャ、という肉の砕ける音がした。
リーゼは詠唱中にも関わらず、思わず顔を上げ、クリスに視線を向ける。
『ヌゥ……今のは効いたぞ』
「当たり前だよ、痛くしてんだから」
神白の右前足に青色の刀身を持つ大剣が突き刺さっていた。
神白の美しい純白の体毛は真っ赤に染まり、身体は右に傾いている。
リーゼがその光景を見て、唖然としていると、クリスは苛立ったように叫ぶ。
「リーゼ、急げ!!」
長くは保たない、とクリスの目がリーゼに訴えていた。
『腕が震えているぞ、『青色の悪魔(ブルーデビル)』」
「僕はあの子に花をもたせてるだけさ。
後、その名で僕を呼ぶなよ、狼のくせに」
神白の手前、辛いとは言えず、クリスが虚勢を張り、時間を稼いでくれているのはリーゼにも理解出来た。
慌てて詠唱を再開する。
師匠を唯一唸らせたこの魔術。
必ず、成功させてみせる、と自分に言い聞かせるリーゼ。
詠唱は最終段階に入る。
最初のコメントを投稿しよう!