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「……『番人の祝福』って?」
「さっき言ってた『恩恵』の事だよ。
ほら、扉が出てきた」
ティアが破壊した場所以外、何も無かった空間に、突如、黒塗りの扉が出現する。
「よし……行こう」
ティアはハジキに肩を借りながら、扉へと進む。
クリスもシルフィに付き添われ、扉へと向かう。
そんな光景を見ていたリーゼは足を止め、唇を噛み締め、俯く。
「……リーゼ、どうかしたのかい?」
前にいたアンディが立ち止まり、立ち止まったままのリーゼに尋ねる。
「私……足引っ張ったのに……何で誰も怒らないのかな……って」
今回の事で、クリス達に利益などある筈が無かった。
『祝福』を受けるのはリーゼだけ、まだ出会ったばかりの自分を救うために命を懸けたクリス。
それほど親しかったわけでは無いのに、無理をしてまで助けに来たティア。
何故、2人がそこまでしてくれたのか、リーゼに理解出来なかった。
魔術師はエリート集団の集まり。
共謀があっても信頼は無く、
背徳があっても絆は無く、
喧嘩があっても会話は無かった。
つまり、人を信じる経験など、リーゼには師匠を除き、一度も無かった。
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