鈴虫は知っている。

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ニャー。 朝からあの猫がうるさい。   「またか、あの猫、勝手にうちの縁側に居座りやがって…。」 何回追い払っても帰ってきやがるあの猫、もう追い払うのも疲れたから今は黙認状態だ。 我が家の縁側を我が物顔で占拠してやがる。 なんというふてぶてしさだろうか。 今では、お袋も「ニャーコ、ニャーコ」と、名前をつける始末だ。 まったく、家族の一員にでもなったつもりか? そのくせ、俺が仕事に行っている昼間はどこにもいないらしく、朝方と夕方にだけ縁側に出没するらしい。   迷惑な話だ。 (俺がいるときにニャーニャーうるさく鳴かなくてもいいだろうに…。) 「ちっ、もう7時か…。そろそろ会社いかないと…。」 その間あの猫はまたどこかに散歩に行っているのだろう。 そしてまた、俺が帰ってくる時間を見計らって縁側に帰ってくるのだ。 まったく、忌々しい…。
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