鈴虫は知っている。

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「ただいま~…。」 家に帰り、夕飯を食べ、風呂上がりに縁側で一杯やりながら、夕涼みをするのが最近の習慣になっていた。  リンリンリン…。 うちわ片手に、鈴虫の鳴き声を聞きながら芋焼酎の水割りを飲む。 これがどんな癒しにも勝る最高の時間だ。 ニャー。 またかよ…。 また来やがった、あの猫。俺の大切な癒しの時間を根こそぎ奪っていく、忌々しい猫よ。 今夜も俺に安息は与えてくれないんだな? ニャー。 「ん?」 まじかよ、こいつ。 今日は膝の上に乗ってきやがった。 警戒心が無さすぎる。 ニャー。 おい、こっち見んな。 仕方無しに膝の上には乗せていてやるが、そんなに物欲しそうな顔で見られても何もやらないぞ。 リンリンリン…。 あー…。 今夜も月が綺麗だ。 こいつにもこの夜空の素晴らしさがわかるのだろうか? 猫は相変わらず、物欲しそうな顔で俺の顔を注視している。 「お前にはわかんねぇか…。たかが猫だもんな。」 そんなやりとりをしながら夜は更けていった。
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