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「おそらく敗北した関羽は斬られる事を望みましょう。そうなれば蜀との関係は最悪となり、今はまだ小規模の内乱も大きくなるでょう」
夏侯淵は息を飲んでいる。
「ご子息が樊城に着く頃には曹仁殿も対応策に追われているところ。となれば、間違いなく関羽は挟撃されましょう」
「阻止する手立てはないものか?」
黄賀は頭を垂れ、暫く考え込む。
「……私が停戦調略をしましょう」
夏侯淵の眼は黄賀を捉えて離さない。
元々、夏侯淵は黄賀の政治官としての才能以上に、交渉術に長けた才能を見抜いていた。なるほど、黄賀の舌をもってすれば、あるいは……。
黄賀は荊州の出身で地理に明るいという。剣閣の渓谷には長江への支流があり、それを降れば驚く程早く荊州に着くそうだ。
「間に合うかもしれない」
かくして夏侯淵の一縷の望みは黄賀の双肩に託された。
「鮑先生、お願いします」
夏侯淵を医者に頼むと、黄賀はそれまでの踵を返し、荊州に向かった。
だが、その胸には一沫の不安が残っていた。
続く。
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