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黄賀は魚復の地より入蜀をする。
だが、道中事件に巻き込まれたのだ。
大木の根本で一夜を過ごそうとしていたところ、焚火の明かりに連れられて若い旅人が現れた。
黄賀はこれを快く迎えたのだが、ふとした事で旅人の胸元から書簡が落ちてしまったのである。
慌てて書簡を胸元に戻す旅人。しかし次の瞬間、胸元から出てきたのは短剣であった。
「悪いが、書簡の存在を知られた以上、生かしておくわけにはいかない」
旅人は黄賀に飛びついてきたのだ。
しかし、そこは老熟の黄賀、この旅人をなだめ、諭し、篭絡しようとする。
「私が一重に生き永らえたのは朝に香を焚き先祖を祭り、夕には身を整え徳を磨いてきたからだ。今ここであなたが私を殺そうというなら、とうの昔に身を滅ぼしていただろう」
旅人は黄賀の態度に感じ入ったのか短剣をおさめ走り去って行った。
続く。
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