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昨夜の出来事に胸騒ぎを覚えた黄賀は、それまでの物見遊山の気持ちを捨て、旅を急ぐ事にした。
あの書簡は、一体……。
彼の向かう先は蜀で最も険しい山々がそびえる剣閣だ。鉄銭を払い、粗末な馬車を乗り継ぎ、剣閣の東方を目指した。
何故彼はわざわざ険しい道を選んだのだろうか?当然、それには理由があった。
鋭く突き出た岩肌に隠されたかのようにその庵は存在した。
道なき道を降ると途中から道が舗装され、谷底には穏やかな清流が見える。
見上げれば突き出た岩肌の隙間―山道から見ればその存在が庵の姿を覆い隠しているだろう―から陽の光りが零れる。
秘境ともいえる剣閣の一画で黄賀を待ち受けていたものとは……。
続く。
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