第三話

2/2
前へ
/34ページ
次へ
 昨夜の出来事に胸騒ぎを覚えた黄賀は、それまでの物見遊山の気持ちを捨て、旅を急ぐ事にした。  あの書簡は、一体……。  彼の向かう先は蜀で最も険しい山々がそびえる剣閣だ。鉄銭を払い、粗末な馬車を乗り継ぎ、剣閣の東方を目指した。  何故彼はわざわざ険しい道を選んだのだろうか?当然、それには理由があった。  鋭く突き出た岩肌に隠されたかのようにその庵は存在した。  道なき道を降ると途中から道が舗装され、谷底には穏やかな清流が見える。  見上げれば突き出た岩肌の隙間―山道から見ればその存在が庵の姿を覆い隠しているだろう―から陽の光りが零れる。  秘境ともいえる剣閣の一画で黄賀を待ち受けていたものとは……。 続く。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加