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なんで…?
『稔李、こちら凛(リン)。俺の彼女。』
どうして……?
昨日までいなかったじゃない、そんなの。
ねぇ……
兄さん--……
『稔李君、よね?赤葉から話は聞いてるわ。よろしくね!』
よろしく?僕から兄さんを奪ったやつとよろしくするの?
嫌だ、そんなの。
僕は認めない。兄さんは僕のものだ。
『…稔李?どうした?』
『いや、なんでも。よろしくね、凛さん。』
僕達は握手をかわした。
汚らわしい。
その手で兄さんに触れるな。
兄さん、嘘だよね?
嘘だって言って…。
だって兄さんを一番愛してるのも理解してるのも僕だもん。
僕だけが兄さんの隣にいていいんだ。
『じゃあ、今日はもう帰るわね。またね、稔李君。』
『はい。さようなら。』
そう、さよならだ。
もう二度と会うことはない。
僕は台所から包丁を持ち出した。
『兄さん、』
『どうした?稔李。』
『あの女と別れてよ。』
『何言って……』
『僕耐えられないよ…ごめんね、兄さん。凛さんとお幸せに……』
ブスッ--……
『稔李ッ!?』
『にい…さん……ゴホッ……すき……。すきだっ…たの……ゴホッ』
僕の周りに血だまりができる。
『稔李ッ、稔李ッ嫌だ!死なないでくれ!』
『もう……ゴホッ…
ぼくは………むりだ…よ、
さよ…ならにい…さ………
すき……だった…よ……?
ごめん………な…さ……』
稔李の手がだらしなく下に落ちる。
『稔李ッ、稔李ッ!!稔李がいなくなったら俺は…?俺はどうしたらいい!?』
ふと赤葉は稔李に刺さっている包丁をみた。
『そうか……今行くからな…稔李……。』
そして稔李から包丁を引き抜くと
自分に……
刺した。
薄れていく意識の中で、赤葉は考えていた。
--俺は…どこに行くんだろう。俺達はどこで間違えたんだろう--……
そして赤葉は静かに息を引き取った。
兄さん、
稔李、
--愛してた……
愛は狂喜にも似て
END
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