*今までの私の事*

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キャバ嬢としての私は それなりに売れっ子だった。 お酒を飲まない子よりも 飲める子の方が指名を取れるのは当たり前で 私は お酒に強かった。 胸元と背中が大きく空いた黒のロングドレス。 スリットも深く入って 歩くたびに私の足が見え隠れする。 このドレスを着ている日は 場内指名が多く入った。 『梳羅さん。 3番テーブルで ご指名入りました』 『はぁい』 気の抜けたような返事をしてテーブルに向かい挨拶。 『ご指名ありがとうございます。 梳羅です』 ニッコリ笑って 自分の倍以上も年上のおじさんの隣に座る。 肩や腰に回される手。 引き寄せられる体。 最初は 嫌悪感があったけど慣れてしまえば何でもない。 自分から体を預け お客様の膝の上に手を乗せる。 それだけで お客様は喜ぶのだ。 そして私が飲みたいという ボトルが入る。 『こんな高いボトル…。 悪いよ…』 か弱い女の振りをして お客様の手を さりげなく握る。 『梳羅が好きな酒だろ? 安いもんだよ』 『ありがとう!』 そう言って 腰に手を回し軽く抱きつけばいい。 そんな お客との駆け引きを自分で覚えていく。 それが指名に繋がって お金になる。 気がついたら 私は 水商売の魅力にハマッて 立派なキャバ嬢になっていた。
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