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その頃の私の財布には 30万円近くのお金が いつも入っていた。
お客との同伴・アフターで飲みに行く時は お客がお金を出してくれる。
もちろん財布を出して払う素振りは見せるし 何回も御一緒してくれる人には 多少 お金だって出したけど そんなの たかがしれている。
それどころか 店で着るドレスなんかも お客が買ってくれていたんだ。
『梳羅が着る服は オレが買ってあげたいんだ』
そう言うのは 私に入れ込んでる上客達。
もちろん お断りする。
でも 自分が買ったドレスで働いている私の姿がたまらないらしい…。
だから 何回かに一度は お言葉に甘えて買ってもらう。
一番 凄かったのは ドレスを買いに銀座まで連れてかれた事。
お客様の名前は『大西様』
何かされるんじゃないだろうか…。
そんな不安が無かったわけじゃない。
でも その頃の私は 不安よりも好奇心。
そして 銀座という場所の魅力にワクワクしていた。
いざ 行ってみると 大西さんは 凄い紳士的で本当に私に ドレスを買いたかっただけらしい。
大西さんが私の為に選んだドレスは 黒に紫が所々 混じったロングドレス。
肩は 大きく空いていた。
ドレスを試着した私を見て大西さんは喜んで言った。
『やっぱり梳羅は 黒くて 大人っぽいドレスが良く似合うよ』
そして 店員さんに買う意思を伝える。
値札には 58000円の文字。
自分では とてもじゃないけど手を出さないドレスに間違いはない。
『ありがとうございます!』
笑顔で言った私に 満足そうな大西さん。
男の人って 良く分からない…。
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