序章

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 私の知る世界は狭い。   ドーム状の天井も壁も床も、鈍い銀色。  ベットはたぶん、シングルサイズ。  社長椅子と言う表現で合ってるのかな? この椅子は私にとっては大きい気がする。  型の古いパソコンラックに、同じく型の古いパソコンが乗っている。    この部屋には鏡が無いので、自分がどんな顔をしているのかは見た事がない。  自分の姿で知っているのは、白い肌と茶色の髪と自分が女だと言う事。かな?    人と何が違うか……要するに特徴は何か? と言われると、右手から伸びている管じゃないかと思う。    この管は、私の体に必要な栄養を送りこみ、不要な物を排出しているみたい。今まで、食事を摂った事も、排泄した事もないのに、生きていられる理由はこれしか考えられない。     「ふぅ」    ため息を吐きながら、今日の仕事を終わらせる。仕事と言っても強制な訳で、お金が貰えるとかはない。 十六桁の足し算と引き算だし、パソコンを使うし、そんなに大変な作業じゃない。ちょこちょこっとやれば終わる。     後は好きな事をして良いみたい。と言っても、パソコンを弄る以外に出来る事はないんだけど。  だってこの部屋には、ベッドと椅子とパソコンしかないんだもん。
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