序章

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 落ち込みかけた所に、壁の向こうから、怒鳴り声が聞こえた。パソコンの音を消して、壁に耳を当てる。   「テ ! ……が…を……ール!」    声は若い男の人。テールと言う娘を探して、何度も何度も抜け出して、暴れては、捕まって、連れて行かれる。   「私は……娘じゃない、よね?」    いつからか、そんな事を思っていた。会った事のない両親と、娘を探す彼を重ねてしまう。    そんな訳はないのに。    彼はいつものように遠ざかって行く。今度はいつ聞けるのかな? もうパソコンの音は嫌。ここから、出たい。   「はな…ぇーー!」    いつもよりハッキリとした怒りの声。壁から離れて居てもハッキリ聞こえた。   まさか、近くにいる!?   驚いて聞こえた方に走る。壁に耳を押し当て、彼がどこに向かうのか探った。   「テール! 今行くからね!」    近付いて来てる。近くに居る。   きっと通り過ぎる。 きっと通り過ぎる。 きっと通り過ぎる。   でも、もしかしたら……。 もしかしたら……。 私の所に……。   きっと通り過ぎる。 きっと通り過ぎる。 きっと通り過ぎる。   お願い……私をここから、出して!!
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