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ープロローグ 十年前ー
戦え。守る為に。
……太陽が光り輝く日だった。
昨日と変わらぬ平凡な日。
しかし、この日から世界に「太陽」は失われた。
まだ幼かった彼は、訳も分からずに地下へ避難させられた。
母は何かに脅えていた。
何故かは、六歳の彼には理解出来なかった。
ただ、雲とは違う何が太陽や空を覆い尽くす勢いで広がっていく事は理解していた。
沢山の大人に押され、二人は地下に入っていく。
その度に次々と建物の屋根で見えなくなっていった。
最後に瞳に映った空にいつの間にか黒雲が現れ、空を、太陽を蝕んでいっていた。
こうして、暗闇の空間へと彼は入っていった。
彼は最後に見た、雲に消える太陽を忘れることが出来なかった。
忘れてはならないと、思っていたのである。
そして、地上への道は固く閉ざされる。
電気に照らされた空間が、とてつもなく寒く感じた。
人工の光に照らされても、未だこのコンクリートで固められた地下空間は、少年にとって闇であったのだ。
その記憶を保ったまま、彼は成長を遂げていく。
そして―!
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