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片付けが終わり、三人は翡波を筆頭として山中へと入った
奥へ奥へと進み、キャンプ場から遠ざかる
「翡波ー、どこまで行くの?」
朝音の横を歩いていた夏祈がとう
その顔には微妙に疲労の色が浮かんでいた
「もう少し。っと、着いたぞ。」
二人はすぐさま翡波の側に寄り、目の前の光景に感嘆の声をあげた
「キレー…」
「だろ。昔家族で来たときに見つけたんだ。」
翡波が微笑する
目の前の湖は月光をはじき、水面が煌めいていた
水も、隔離された此処だからこその美しさを放っている
だが、朝音の視線は湖からは外れていた
先にあるのは、翡波の横顔
微笑した翡波は、朝音にとって魅力的だった
恋をしているからこその思い
現に、夏祈は湖に釘づけである
「私、ヤバイかも…」
何をしてても
何を見てても
目が翡波を追っている
末期症状…か
独り言のような呟きをききとめた翡波が、上の空になっている朝音を一瞥した
そして、いつもどうりに聞く
「どうした、朝音。」
急な問いかけだ。
朝音は案の定驚き、視線をさまよわせる
そのとき、水面が激しく波打った…――。
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