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それは、真夜中のことでした。
岩棚がどこまでも広がる地平線の上に、満天の星々が空に輝いています。
風が吹き抜ける音が遮るもののない大地にこだまして、それ以外は誰の声も聞こえない、そこは寂しげな場所でした。
遠くを見渡せる少し高い岩場があります。
そこに誰かが一人で座っていました。
岩場のふちに座り、星空を眺めています。
足をぶらぶらと宙に遊ばせて、暇そうにただ空を見つめていました。
そんな彼の傍に、もう一人誰かが遠くから歩いてきました。
薄汚れたマントに身を包み、吹きすさぶ風を防ぎながら歩いてきました。
目深に被った帽子からは顔を見る事が出来ません。
やがて岩場の近くまで来たその一人は、岩場に座っていた誰かに話し掛けます。
「やあ、こんばんは。今夜は風が冷たくて体にこたえるね」
もう一人が答えました。
「そうかい。私にはよくわからないな。もう長いこと、ここにいるものだから」
マントを脱いで、その一人は岩場の上に登ってもいいかと尋ねました。
もう一人が構わないと伝えると、彼は帽子を取りマントを担いで、岩場の上に登ってきました。
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