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登り終えると、彼は座っている背中に向かって話しかけました。
「君、星のかまきりだろう」
「そうだよ。君はだれ?」
「僕は、流れの旅人さ」
旅人はそう言って、星のかまきりのすぐ近くに腰掛けました。
かまきりは淡々と言いました。
「私を知っているんだね」
「君は僕の国ではそれは有名だったもの。他の国でもそうだと思うけど」
「そうかい。だけど暗証番号を入れないと私は使えないよ」
「僕は野望も夢も持っていない。古代兵器を使う気なんか無いさ」
旅人が肩をすくめながらそう言うと、星のかまきりは安心した風に呟きました。
「ああ、そう。それはよかった」
その目はあいかわらず、空の星を映しています。
「よかった? おかしな事を言うね。兵器や武器は使って貰ってこそ価値のあるものじゃないのかな?」
旅人が訊きました。
かまきりはゆっくりと首を振ります。
「私はもう嫌なんだ。私を取り合って国同士が喧嘩をして、いくつもの国が消えてしまった。私の周りは争いばかりだ。もうそんなものは見たくない。うんざりだ」
旅人は納得したように言いました。
「そうか。だから君はこんなところにいるんだね。誰もいない場所に」
「そうだよ。人間のいない、ここは楽園だ」
そう言いながら星のかまきりは旅人を見ました。
「君はそう思わないかい?」
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