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そうして、目を伏せてかまきりに告げました。
「僕は君を造った国の人に、君を破壊しろと言われて来たんだ。」
星のかまきりは一瞬驚いたように目を見開きましたが、やがて悟ったように呟きました。
「そうか。私はもう要らなくなったんだね」
かまきりの声は悲しむ様子はなく、穏やかさに満ちています。
「ああ、よかった。世界は良くなった」
心の底から安心したようにそう言いました。
それを聞いて、旅人は何故か自分の心が苦しくなるのを感じました。
彼は黙って、自分の荷物から両手に収まるほどの丸い球体を取り出しました。
「これはとても強力な装置なんだ。君の装甲をめちゃくちゃに壊す事が出来るくらいに」
顔を伏せてそれを差し出す旅人から、星のかまきりは大事そうに受け取ります。
「ありがとう。」
旅人は驚いてかまきりを見ました。
「どうしたんだい?」
不思議に思ったかまきりが訊きます。
「お礼を言われるとは思っていなかった」
旅人は呆然として呟きました。
「今まで僕が装置を渡した機械達は、僕にお礼を言ったりはしなかった。君は僕を恨まないのかい?」
躊躇いながらそう聞くと、かまきりは答えました。
「兵器は人を恨まないのさ。人に造られて人に使われる。それだけだよ。それに」
空をまた見上げます。
「私はずっと星になりたいと思っていたんだ。地上にいるより、空で彼らの仲間に混じった方が寂しくないかもしれないから」
旅人は悲しそうな顔で、星のかまきりを見ました。
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