2672人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、槙村くん。…なんで輝を“ゴリカマ”って呼ぶの?カマはわかるけど、ゴリって」
「…あゆちゃん知らねーの?
あいつスポーツテストの時、砲丸を野球ボールみたいに軽々投げたんだよ。しかも基準値の三倍くらいの記録叩き出して。
有り得る?砲丸だよ?
あんな技、人間じゃ無理だよ。ゴリラにしか無理」
槙村くんは、これ以外有り得ないとばかりに断言した。
そういえば去年のスポーツテストでも、みんなが騒いでいた気がする。
入学当時、乙女キャラで美少年な輝は、良くも悪くもとにかく目立っていて、特に男子からはよく思われていなかった。
でも尋常ではない記録を叩き出して以来、“きもいオカマ”から、“怒らせたらやばいオカマ”になったんだっけか。
それでクラスメイト達は、よそよそしくも輝に友好的になり始めたのだ。
1年前を思い出しながら、私は槙村くんの言う酷なあだ名にも妙に納得できた。
「ちょっと。あゆに有らぬこと吹き込まないでちょうだい」
「有らぬことじゃねーし」
「そーだよ。私も輝がゴリラ並みなのはとっくに知ってたし」
「先生!アタシ、イジメられてます!」
輝の半分本気の訴えが、クラスメイトの笑いを誘ったところで、終業のチャイムが鳴った。
最初のコメントを投稿しよう!