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「よろしく。桐山輝です」
「ぇ、あッ…か、華宮歩です。よろしく…」
さすがに至近距離からの食い入るような視線に気付いた王子様は、嫌な顔ひとつせずに、というかむしろ優しい笑顔で自己紹介をしてくれた。
見詰めていたことがバレて目が合ったことと、期待を裏切らない甘いバリトンボイスに思わず声が上ずって、私の顔は羞恥心で火照る。
それを見て“桐山輝”と名乗った王子様は、ふ、と小さく笑った。
笑われたりしてどうしようもなく恥ずかしいはずなのに、私は彼から目が離せない。
まるで捕らわれたみたいに…
すると、彼が何かに一点集中して凝視していることに気付いた。
そのきらめく瞳には、間違いなく私が映っている。
自意識過剰ではなく、本当にそれが確認出来るほど、いつの間にか距離は詰められていて、私の体は固まった。
「華宮さん…」
「ッ…!?」
囁かれる唇は、一秒もあれば触れられる位置にある。
キスされる!
そう思って反射的に目を瞑った直後、信じかねるダミ声に、私のメルヘンタイムは終わった。
「あなたの髪、超キレイ!何コレ?絹?
羨ましいわ~!!」
恐る恐る目を開ければ、そこには私のストレートの髪の感触を、小指をたてながら楽しむ桐山輝がいた…
…これが私と輝の出会い。
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