* 嘘が上手くなるたびに *

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      *** アキと知り合ったのは16才の春。 桜が満開に咲き乱れる入学式の日で、あたしが新入生、アキが2年生だった。 普通なら入学早々上級生と関わることなんてないのだろうけど、あたしとアキは出会ってしまった。 この出会いは偶然?それとも必然? あの頃のあたしならきっと『偶然』と答えたかもしれない。 だけど今のあたしは胸を張って『必然』と答える。 あたしとアキが、大人へと成長するための『必然の出会い』なんだと。 ――――…… 「キレイな桜並木だろう?」 学校へと続く坂道は、満開の桜並木の桃色と緑のコントラストが鮮やかであたしの心を魅了していた。 あたしの足は自然と止まり、桜に見とれていると背後から声が聞こえてきたのだ。 低く暖かみを帯びた心地よい声。 ゆっくりと振り返ると、同じ学校の制服を着た男子が目を細めてあたしを見ている。 その制服の馴染み具合から、上級生であることがすぐにわかった。 「ここの桜キレイだろ?俺はあと一回しか見れないけど、君は二回も見れる。幸せだろう?」 「えっ?……はぁ」 屈託ない笑顔のこの男子がアキだった。 あたしの隣りに立つとさっきまであたしがしていたように、アキは目を細めて桜並木に心を奪われていた。  
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