* 嘘が上手くなるたびに *

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桜を満喫したあと、何故かアキはあたしの隣りをキープしたまま学校へと続く桜並木を二人で歩いたのだけれど、どうしていいかわからずあたしは無言でそれを許した。 ドキドキと活発に動く心臓の音が、隣りを歩くアキに聞かれてないか気が気じゃない。 そんなあたしの思いなんか知らないアキはあたしの名前を聞いてきて『小早川ゆん』と答えたあと、どうしてこの人と一緒に登校しているのだろうと、その時やっと疑問に思ったのだ。 「"ゆん"かぁ。可愛い名前だね」 珍しいと言われることはあっても可愛いと言われたことは初めてで、あたしは耳まで真っ赤になったと思う。 多分この時、あたしはアキに恋をしたんだ。 アキの無邪気な笑顔に アキの柔らかい声に アキの存在に――       *** それからもアキとはかなりの確率で、桜並木で一緒になることが多かった。 初めは桜並木、それから校舎、そして学食で。 一日として会わない日はなかった。 そしていつの間にか約束をして会うようになっていく――  
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