* 嘘が上手くなるたびに *

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      *** あたしとアキは友達のまま、アキは最後の、あたしは二回目の桜並木を下っている。 「アキ先輩は大学に進学?」 「ん~、行きたい大学が無いからなぁ。それに今まで大学受験の勉強もしてないから、今更大学行きたいって言っても時既に遅しだろうね」 大きく背伸びをしながらアキが答える。 あたしはアキの言葉を聞き「よかった」とホッと小さな溜息をついた。 あたし達の地元に大学は無い。 一番近い大学でも隣りの県で、ここから通うには無理があった。 だからもしもアキが大学進学の道に進んでいたら、アキが高校を卒業したあと街で偶然会うこともなく、あたしの高校生活はある意味終わりを迎えることとなっただろう。 だけど大学には行かないことで、あたし達の繋がりが完全に切れることはなくなったのだ。 「ゆん」 「何?」 「ゆん」 「だからなぁに?」 「ゆん」 「……」 嬉しい癖にあたしは意地悪くアキの言葉を無視した。 いつもなら『好きだよ』で終わる言葉遊び。 今日もそれで終わると思っていた。  
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