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大成の目は涙ぐんでいた。
京美がいないのだ。
全ての部屋を調べたが、京美は見つからなかった。
背後からは追ってくる多くの敵、前には京美がここにいないかもしれないという恐怖心。
そのプレッシャーに潰されそうであった。
しかし止まってはいられない。
また銃撃音がして大成は、隠れないといけなかった。
銃を二、三発撃って見張りの足止めをしてから、走った。
「ライントンの方にいてくれよ・・・」
その時前の柱の陰からライントンが現れた。
しかし一人で京美はいなかった。
「京美は?」
「いなかった。お前のところは?」
「いない」
「じゃあどこにいるんだよ!」
大成がライントンにつかみ掛かった。
しかしライントンは冷静に、
「ここにはいないということは確かだ」
「ふざけるな!」
大成は激怒した。
「いないだと・・・ここにいなければどこにいるんだ!」
「とりあえず一旦逃げて・・・」
「一回逃げたらここの警備はもっと厳重になるだろ!そしたら二度と京美は取り返せない」
ライントンの首元に食い込ませた拳を緩めて、
「俺は京美を見つけるまでまで逃げないぞ!」
大成は言った。
ライントンの胸から声がした。
素早く無線を取り出した。
「前庭の包囲が終わった。一人はアメリカ人。ここから逃がすんじゃないぞ。一気に畳み込め!」
この命令が下った瞬間、後ろから何人もの見張りが銃を乱射してきた。
大成らはライントンが来た道を辿って逃げようとした。
柱を一周した時、二人が見たものはすごい光景だった。
螺旋階段を通して見える、下の階には多くの武装をした軍隊がいた。
そしてこの階には二人に銃を向ける見張りがいた。
ライントンは窓を見た。
前庭にはたくさんの車に、たくさんの軍人。
大通りには一般庶民のやじ馬がたくさんいた。
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