64人が本棚に入れています
本棚に追加
ウォンは言った。
「諸君、二年に渡る工作活動ご苦労。この実績が功をそうして諸君の未来が栄えることを心から願う」
「あら、あなたがリーダーだったからここまでやれたのよ」
仲間の女が言った。
「買い被るな」
筋肉隆々の上半身を丸めて照れ臭そうに言った。
「買い被ってなんかないさ」
若い男の仲間が言った。
「ウォンはなんでもできた。密入国から諜報活動、そして拉致・・・」
指を折って話していた時に仲間が一階の倉庫から上がってきた。
胸には日本製のビールが五本抱えられていた。
「上陸する前に乾杯をしよう」
「いいね」
ウォンが低い声で言った。
四人は一人一本のビール瓶を持って、適当な所に腰掛けた。
「イヒョンも呼んだ方がいいかしら?」
女が聞いた。
「今はイヒョンの当番だ。どんな時でも見張りは必ずつける」
ウォンは厳しく答えた。
「さすがのウォンだな。妥協は一切しない」
「仕事しかできない人間だからな」
ウォンは静かに言った。
「じゃあ乾杯しようかしら」
「ああ、こんな調子じゃ乾杯の前に母国に着いちまうぜ」
「俺が音頭をとる」
若い男がそう言うと、四人は座ったままビール瓶を上に上げた。
「任務成功に乾杯!」
「乾杯!」
一斉にビールを飲み始めた。
「仕事言えばさ、ウォン」
若い男が言った。
「ウォンって元々いいとこの軍人なんだろ、なんでこんなことしてるの?」
「余計なことは話したくない・・・」
「ここだけの話、軍で何かヘマしちゃったの?」
シーンとなった。
ウォンは立ち上がり、若い男の方まで歩いていった。そして胸倉を掴みおもいっきり殴り付けた。
「生きて母国に帰りたかったら、俺の機嫌を損ねないことだ」
冷たく言い放ち、一階に繋がる階段を下った。
「イヒョンと交代してくる」
最初のコメントを投稿しよう!