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ワンの指示により、ウォンは拘留所で大成の世話をしていた。
「これじゃあまるで降格だ」
一人つぶやきながら、大成に食べさせる夕食を作っていた。
ワンは明らか自分のことを嫌っている。
その原因がわからない。
そして大成の態度も余計にウォンをいらいらさせる対象となっていた。
その時ドアが開いた。
「ごめんなさい」
そこに立っていたのはリーだった。
「ああ、リー」
ウォンが立ち上がり、リーに触れにいった。
「大事にすると言っておきながらスマン。こんなざまで・・・」
「いいの・・・あなたもあなたで大変なんだろうし・・・」
不器用な会話だった。
「どうした?」
「お願いがあって来たの」
「何だ?」
リーがすがるような目つきでウォンを見た。
「大成に会わせてほしいの」
「それはできない・・・」
少し間を開けてウォンが答えた。
「上からの命令は絶対だ。大成には一切の権限がない」
「ウォン・・・あなたが仕事に忠実なのは私が一番よくわかってるわ。だけどお願い。どうしても伝えたいことがあるの・・・」
ウォンは答えなかった。
まるでこの沈黙が答えだというように。
沈黙を破ったのはリーだった。
「ごめんなさい。無理なお願いしちゃって」
リーは背を向けた。
「待て!」
リーの足が止まった。
「これを持っていってやれ」
ウォンが差し出したのは、夕食だった。
リーの顔がぱっと輝いた。
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