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【応接室】
そう愁に用事があったのだ。あの日から愁の姿を見ていない。気にかかった渚は、彼の様子を見たかったのだが一人で行ける時間がなかった。
それだけではない。自分の身を自分で守れなかったが故に稽古で相手してくれた愁に顔向け出来なかったのだ。
時間はかかってしまったが今なら言えそうな気がすると心の中で思った。
ドアをノックすると鍵が開き戸がゆっくり開く。
『…』
彼女から訪問してくることは初めてで目を見開いた。だが愁は渚に顔をあわせられず少しうつむき、用件を聞く。
“すみませんでした…自分の身を自分で守れななくて…私、愁さんに顔向け出来なくて…今まで逃げてました”
声は無くても口を開けて必死に指を動かし手話をする。
『なんで君が謝るの?謝るのは僕だよ…何も出来なかったんだから』
“だって私は…”
『自分の身すら守れないなんて情けないじゃないかって?』
図星な渚に少しムっときた愁は席を立ち渚を部屋に入れ戸を少し力強く閉める。
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