〈Actionー1.HELL〉

7/15
前へ
/148ページ
次へ
 彼の言葉に、少女は微笑む。立ち上がり、少女の顔を見る。汗一つ変えずに、綺麗な顔立ちをしている。 「君……名前は?」  少女が尋ねる。少年は己が出来るだけの、最高の笑顔で返そうと心掛けた。  過去の痛みが、一時的に和らぐ。 「リコル。僕の名前はリコル、です。それで、貴女は……?」  吐き出しかけたフルネーム。しかし、そこは何とか呑み込み、少年は「リコル」と名乗った。 「私はシナ。シナ=ウィザルド。よろしくねっ」  最早ノックダウン寸前。この少女……いや、シナの笑顔には殺傷性が秘められていると、リコルは痛感した。 「何があったかは知らないけど、此処は危ないよ? リコルくん、何で此処にいたの……?」  シナは知らない。だからこそ、その質問はリコルの心を容赦なく抉った。  しかし、リコルはそれを悟られないように、必死で表情を繕う。  しかし、声はでなかった。その場をはぐらかす言葉は、見つからなかったのだ。  何も言わないリコルを見て、何を思ったのだろうか。シナは、繋がった手にギュッと力を入れる。  そして 「……人には、言えない事?」  傷つけないように、尋ねた。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6361人が本棚に入れています
本棚に追加