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★ ★ ★
「取り敢えず、お茶でもいれてくるねっ」
シナはそう言ってソファーから立ち上がり、台所へと歩いていった。リコルは、只呆然とそれを眺める。
──なぜ、此処に?
リコルの頭の中は、それで埋め尽くされているといっても過言ではない。
あの家から逃げ出し、迷い、襲われ、助けられ、連れられ──此処にいる。
超展開の連続だ。
「リーコールくんっ、お茶持ってきたよ……って、大丈夫? しんどいの?」
シナが慌てるのも無理はない。何たって、リコルが怪しげな呻き声をあげながら、頭を抱えているのだから。
シナの声で我に返ったのか、リコルは慌てて立ち上がった。
「す、すみませんっ! ……僕、このお茶飲んだらすぐ出ていきますから……」
そして、お茶に手を伸ばしたのだが──
「……どこに行くの?」
その手は、シナの冷たい視線によって止められた。その瞳からは、怒りすら感じられる。
「えっ、いや、その……適当に宿でも──」
「お金は? その次の日は? お金がなくなったら? お腹がすいたら?」
「……あー……」
「考えてないなら、此処にいときなよっ」
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